プロの縫製職人は、「綺麗な縫製」には出来るが「美品」になるかは別問題
2018/07/06
着物リメイクで一番大切な事は…「縫製」だと思っていませんか?
違いますよ、、、「設計」です。
どう作るか、これが一番大事な部分ですね!
二番目に大事なのが「縫製」です。
勿論どちらも両立しないとダメですが、どちらが大切かと言えば設計・デザインになると思います。
縫製は、出来て当たり前、ですので…。
当店では「設計・デザイン」は全て社内でやります。
そしてその設計通りに縫う役目を担っているのが「当店専属の縫製スタッフ」です。
その縫製スタッフについて私の考え方を書いてみたいと思います。
現在、当店には5名の縫製スタッフがいます。
すべて「個人」です。
その5名に共通している大切な事があります。
これが着物リメイクの縫製にはとても大切な条件だと私は考えています。
その条件を、重要な順に書くと…
① 縫製が好きであること
② 縫製が上手であること
③ ミシン仕事が出来る環境であること
④ 縫製での収入を生活の糧としていないこと
⑤ 仕事としての縫製経験は無いほうが望ましいこと
という5つの条件を満たした人に縫製の依頼をしています。
①と②は当たり前なので、③④⑤を順番に説明していきますね。
③ ミシン仕事が出来る環境であること
例えば…
まだ小さなお子様がいる
お年寄りの介護をしている
旦那様が口うるさい
このような環境はミシン作業にとって良くない、と言えます。
ミシン仕事というのは集中力がいる作業です。
ある程度まとまった時間が必要ですし、合間に別の事をしないといけない環境では良い仕上がりにはなりません。
④ 縫製での収入を生活の糧としていないこと
その人の責任感にもよりますが、
そのような状況では、作業量と収入を考えるとどうしてもスピードを優先するようになりますよね。
より多くの収入を得たいでしょうから。
大量生産の場合はそれで良いと思いますが、着物リメイクの場合はすべてが一点物であり同じ物は一つとしてありません。
毎回、何かしらやり方が違うものです。
また、失敗すれば代わりの生地はありません。
着物リメイクオーダー専門店では、失敗は許されないのです。
なので、スピードよりも丁寧さを最優先するべきと考えています。
⑤ 仕事としての縫製経験は無いほうが望ましいこと
今日の本題です。
私は着物リメイクに限っては、過去に仕事としての縫製経験が無い人のほうが良いと思っています。
これは一般社会に言われている事と同じ理由です。
中途採用よりも新卒社員のほうが扱いやすい(教えやすい)と言われてますよね。
ヘタに経験値があると、そのプライドというものがあります。
実は、着物リメイクではこれが大きな障害になるケースが多いです。
その経験の範囲内で作業をしようとするのです。
また、作業効率(スピード)も求めようとします。
先程も書きましたが、着物リメイクはすべてが一点物です。
同じ物は一つとしてありません。
柄もすべて違います。
代わりの生地はありません。
時には変則的な縫い方をしないといけません。
要するに臨機応変にその生地に対応しないといけないのです。
仕事としての縫製経験がある人は、往々にしてこれが出来ません。
こちらが指示すると、イヤな顔をする人さえいます。
これが、プライドが邪魔をしている状態です。
着物リメイクに限って言えば、このような人に良い作品作りは難しい、と考えています。
着物リメイクの縫製に限っては…
●プロ以上に上手で丁寧な素人さんがいる
これが私の持論です。
以上①~⑤の条件をすべて満たした人でないと、当店では縫製をお願いすることはありません。
とてもハードルの高い条件ですが、
こういった人でないと着物リメイクの場合は、「美しい作品」作りが難しいのかな、と思っています。
最後に…
もちろんですが、プロの縫製職人の中にも美しい着物リメイク品を縫える人はいる、と思いますよ。
ただ、その人たちは「作家」と「縫製」を兼ねている場合が多いです。
「自分で設計し、それを自分で形にする」ので縫製も自然と丁寧になるんですね。
これは創造的な仕事です。
逆に、
「人に頼まれて縫製し、対価を得る」…これは、ただの作業ですね。
お金はもらえても、こちらは「ただの流れ作業」になる可能性が高い、よって雑に扱われる可能性もあるというわけです。(その人によりますが)
縫製を外注に頼む以上、その辺の「見極め」をする必要がある。
というお話でした。
PS.
今までの経験上ですが、面白いことに…
本当に縫製が上手な人ほど
お金(縫製代)のことは気にしてません
(うちが安い、という事ではないですよ。)
好きこそ物の上手なかれ
本当に、これ、実感します!!!