姪御様から伯母様たちへの形見分け…「気持ちを形に」
2015/10/14
私はよく、「着物リメイクはお金ではない」というフレーズを書かせていただきます。
着物リメイクは決して安くはありません。
何万円単位の出費になります。
なのに何故、人々は着物をリフォームするのでしょうか?
それは正に、「豊かな気持ちを買う」からに他ならない、と私は思います。
そう、着物リメイクオーダーとは、
品物を買うのではなく、
豊かな気持ちを買う行為なのです。
本日は、その一つの例をご紹介します。
お母様がお亡くなりになられ、生前大切にされていた黒絵羽織からトートバッグ3点をお作りになり、伯母様三名にそれぞれ形見分けとしてサプライズでお渡しになられた方のお話です。
トートバッグ3点ですと、1個15000円前後としても45000円、消費税を含めると50000円近くにります。
(因みに、きちんとしたトートバッグです。ただの袋に縫っただけの簡単なトートバッグではありません。)
そのお客様のご年齢はお伺いしていませんが、リメイクさせていただいた黒絵羽織から想像するに35才~50才くらいの方と思います。
お客様の経済状態などは当然解かりかねますが、いずれにしても、その年代の主婦の方の出費が50000円というのは決して少ない金額ではありません。
しかも、ご自身の為にではなく伯母様たちの為に使う50000円です。
普通に考えて、軽く出せる金額ではありませんよね。
ましてや、お葬式や法事などで何百万円単位の出費があったはずですから。
このお客様にとっての50000円の出費は、まさに亡くなられたお母様の為、残された伯母様たちの為に使ったのです。
●しいては、それがご自身の喜びに跳ね返ってくる、という考え方なのだと感じます。
素直に、「素晴らしい事だなぁ」と思いました。
もうずいぶん前にご納品させていただいた方ですが、「伯母に渡すのが勿体ないくらいです」という言葉を頂き、大変嬉しく感じたのを思い出します。
現代は、一人当たりの平均収入がとても十分とは言えない時代ですが、私達はこうした活きた美しいお金の使い方を忘れてはならない、と感じます。