「中身空っぽでも自立する」事はバッグでは大切な要素です
2017/08/18
先日お見えになったお客様が、着物リメイクらしきトートバッグを手に持っていました。
お話しをお伺いすると、
「百貨店で着物リメイク品の催事が行われていた際、オーダーで仕立ててもらったもの」という事でした。
少しその話題で雑談していた中で、そのトートバッグのオーダー価格をお客様が言ってくださった時です。
普通を装ってやり過ごしましたが、
内心、「えっ」と思いました。
そのお客様も言われていましたが、「バッグがしっかりとしておらず、柔らかくヘナヘナ」だったのです。
表生地と中袋生地を合わせただけのヨレヨレのトートバッグなのです。(たぶん薄手の接着芯くらいは挟んでいると思われますが)
もちろん価格に見合えば、それでも良いでしょう。数千円であれば…。
しかしそのお客様から聞いた価格は…。
なんと、当店の価格とあまり変わりませんでした。
商売の価格設定はもちろん自由だし、他人が関知することではありません。
その業者も、自社の総合的判断でそうしているのだと思います。
私が悔しいのは、
「着物リメイク品とは、この程度のもの」
と、世の中に思われることです。
着物リメイクの業界はまだまだ歴史が浅く、前述のような業者もいるのは事実だと思います。
着物リメイク(着物リフォーム)に興味をもっている世代が比較的ご年配である(50代以上)ことも、前述のような業者を利用することに繋がっています。
いわゆるインターネットを利用するのではなく、実店舗を利用する世代ですね。
今はその過渡期にあるので、いろんな意味で仕方ありません。
例えば、
新車を買う場合を考えてみてください。
何社かメーカーがありますが、
まぁ、どのメーカーを選んでもデザインこそ違えど、クオリティーや機能に支障はありませんよね。
これは、自動車業界が成熟しているからです。
ところが、
着物リメイク業界は、悲しいかな、そうではありません。
それは、歴史が浅くて未成熟な業界だからです。
同程度の価格で、立派なものを作っている業者もあれば、
そうとは言えない業者もあると思われます。
現状では、お客様各位が吟味して依頼する店を決定されるしかありません。
さて、話をトートバッグに戻しますが、
着物や帯は高価なものですよね。
その着物や帯にハサミを入れてリメイクするのですから、作るバッグも気品のある綺麗で良品であるべきだと思っています。
その為の条件を一つだけあげるとすれば…
●中身が空っぽでも、床に置いて立つトートバッグ
であるべきだと考えています。
「立つ」という事は…
しっかりしている、という事です。
「しっかりしている」という事は…
中身を守る、という事です。
バッグ本来の役目である【収納力】と【保護力】を無視して、デザイン要素だけで作るのも決して悪い事ではありません。
でも、ここを考えてほしい。
素材は「着物」や「帯」だという事です。
着物は一生ものですよね。
ならば、リメイクしたバッグも一生ものにしたいとは思いませんか?
大切なものをハサミで切ってまで作り変える品物です。
後悔しないようにリメイクしてくださいね。