着物を切り刻んでも良いのか???
2019/06/01
着物リメイクの仕事をしていると
たぶん、永遠に消えない一つの「疑問」があるんです。
それは…
【着物を切り刻んでも良いのだろうか?】という事。
疑問というよりは、「気持ち」ですかね。
確かに、リメイク品を納品させていただいたお客様からは喜ばれて感謝をされます。
着物リメイクには、一定の「ニーズ」があるのも確かです。
そのニーズに応え、感謝される…
「良い仕事をされてますね」と言っていただける…
一見、良いことずくめの仕事ですが、上記の疑問(気持ち)だけはいつまで経っても消えることはありません。
で、
何故なのかを考えてみました。
お客様から預かる着物や帯は、簡単に言うと「衣類」です。
でも着物となると、ただの衣類とは訳が違うんですよね。
「わけが違う」理由は2つあります。
① 着物は日本の民族衣装である
② 着物には両親の気持ちが詰まっている
どちらも、とても重い理由だと思います。
出来れば、たまにでも着る機会があれば良いのでしょうが、現代ではその機会すら無くなりつつあります。
悲しい事でもあり、仕方ない事でもある
そんな、着物を着ない世代の【受け皿】としての悩み解決法の一つが着物リメイクなわけです。
ご両親から送られた日本の民族衣装
この事実の重さが、「切って良いのだろうか?」という疑問(気持ち)が消えない事に繋がっていると思います。
別の事実として
「箪笥の肥し」は増える一方だ、という事もあります。
ひと昔前より減っているとは言え、まだまだ「花嫁道具の一つとしての着物一式」を用意する”家”もあります。
でも…ほとんどの人は着ずじまい
【着ないのに一式そろえる】
なぜなら日本の民族衣装だから…
なぜなら親の気持ちだから…
戦後70年間の、この大きな矛盾が「着物を着ない世代の悩み」となっているのです。
だからと言って、誰が悪いわけでもありません。
娘が、たった一回着る為だけに何十万円も出して買う振袖
着るかどうかわからないが一応揃える黒紋付き・留袖・小紋など
これらは【日本人の心】だし、
子を持つ親なら当然の気持ちだと思います。
着ないけれど
持っているだけで
何かに支えられている気がする
これが、現代の着物にピッタリの表現ではないでしょうか。
まさに「あなたのご両親の気持ち」そのものが「着物」なのだと思います。
だから着物を切る仕事をしている私には、【着物を切り刻んでも良いのだろうか?】という気持ちが消えないのだと思っています。
こんなふうに考えると、
着物リメイクという仕事は、ただ「デザイン的に美しいモノを作れば良い」という単純な仕事ではない事がわかります。
着物に「上品な色柄」や「普通の色柄」があるように、
着物リメイクにも、使う着物によっては「綺麗な作品になる」とか「あまり綺麗じゃない」というのは正直あります。
でも、着物リメイクとは
【今、手元にある想い出の着物で作るもの】なのです。
そう、自由自在に「生地を選ぶ事は出来ない」のが着物リメイクです。
なので、結果として「あまり美しく出来ない」モノもあります。
でも、それで良いのだと思います。
両親が用意してくれた着物
もう着る事はないけれど
箪笥にしまったままでは心が痛む
せめてリメイクすれば
想い出の証になるし、活用も出来る
これこそが着物リメイクの本質なのですから。
【着物を切り刻んでも良いのだろうか?】その答えは…
もう着ないのなら切っても良いけれど
絶対に失敗しないという「覚悟」
想い出の証を作るという「責任」
これから活用するという「気持ち」
これらが大切だと感じます。
あなたの着物は、誰かの気持ちそのものです。
気持ちには、気持ちで応えるのが【人の道】ですね!
PS,
今日は、このテーマを深く考えてみて良かったです
「着物を切ってもいいのか?」
私自身、この気持ちを払拭できた気がします
お客様の気持ちに応えられるなら
着物は切って良いのです
あなたも是非、こう考えてください
親の気持ちを無に出来ないと思うのなら
着物は切ってリメイクしても良いのです