着物リメイクとはご両親を敬(うやま)い偲(しの)ぶこと
2020/10/14
長年、着物リメイクの仕事をしてきて強くこれを感じます。
着物リメイクをする方のほぼ全員は「自分の着物」か「母親の着物」をリメイクされます。
何故でしょうか?
あなたの好みの着物リメイク品を作りたければ、リサイクル着物店で好みの色柄の着物を買ってそれをリメイクするほうがあなた好みの品物になりますよね。今どき、2、3000円も出せば中古着物を買えますから。
でも、そんな人はほとんどいません。
では人は何故、お手持ちの着物リメイクをするのでしょうか?
その答えが、この記事のタイトルです。
着物リメイクとは両親を敬(うやま)い偲(しの)ぶ行為そのものなのです。
どこかで調達してきたリサイクル着物では、リメイクする意味が無いのです。(ご自分の趣向を凝らしたリメイクをしたい方は別ですけどね。)
①ご両親に買い揃えてもらった着物を、袖も通さずタンスに仕舞いっぱなし。
②母親の形見の着物があるけど、どうして良いかわからずに仕舞いっぱなし。
①のあなたは、ご両親を敬う気持ちでリメイクを考えているはずですし、
②のあなたは、母親を偲ぶ気持ちでリメイクを考えていると思います。
どちらにしても今お手持ちの着物を着る機会があれば良いのでしょうけど、現代では着物を着る機会などほとんどありませんよね。
着物を着ない(タンスに仕舞いっぱなし)のは、あなたのせいではありません。
時代のせいですから仕方のないことです。
今でこそ娘が結婚する際に着物を買い揃える家庭は少なくなっていますが、私達の世代(私は50代です)の人であればご両親に着物を買い揃えてもらっている方は多いと思います。
でも悲しいかな着ないですよね。
それはあなたのせいではなく、ちょうど着物離れの時代にさしかかった世に生まれたからです。
そんなわけで、高額な嫁入り道具としての着物を買い揃えてくれた両親に対する呵責(かしゃく)の念から着物リメイクをされる方も多いのですが、
それは言い換えれば「両親を敬(うやま)っている」のだと私は思います。決して呵責とかではありませんよ。
あと、ご両親の形見の着物をリメイクされる方。
これはもう、美しいですよね。心が。
私は着物リメイクの仕事をしていますが、いざ自分の両親が亡くなって(今は健在です)その形見の着物をリメイクするかと言えば、ウ~ン、ちょっと予想がつきません(汗)
リメイクしないのではなく、「いつリメイクするだろう」という感じがあります。
いつ、そういう気持ちになるのだろうか?
こればかりは親の死はまだ未経験なので想像がつかないですねー。
だからこそ形見の着物をリメイクされる人は尊敬しますし、とても美しい話です。
毎回、形見のリメイクの時には緊張しますし力が入ります。(他のリメイクも全力ですけどね…笑)
納品時には皆さん何らかのメッセージを頂戴するのですが、喜ばれる言葉は本当に嬉しくて、有り難くて、やって良かったと思える瞬間です。
大切な故人を偲ぶお手伝いが出来た喜びからでしょうか。
少し話がそれましたが(笑)
私共の事はともかくとして…
着物リメイクをする人の動機の大半は、
●ご両親を敬う気持ち
●ご両親を偲ぶ気持ち
からです。
ご両親の想いを受け止めて現代風に生かす
という事なのだと思います。
現代風という言葉はあまり好きではありませんが、着物を着ない以上、タンスの着物はリメイクする以外に生かす方法が見当たらないのではないでしょうか。いずれタンスの中で朽ち果てるのですよ。
最近では買取り屋に「売る」という選択肢がなくはないですが、買った時に何十万円もした着物が何百円~1000円位と聞きます。
それで「あなたの着物を生かす」事になっているのでしょうか?
それで「ご両親を敬い偲ぶ」事になっていますか?
もちろんリメイクするには、イコール、それなりのお金を消費します。
私が言うのも何ですけど、オーダーなので安い金額ではありません。
そんなお金、使いたくないって人も当然いるでしょう。
そんな方には、そのまま持っていてほしいです。
そんなに邪魔になりますか?
たとえ二束三文でも売りたいですか?
この仕事をしていると、お客様からよく愚痴を聞きます。
「この前、売ったけど二束三文だった」という愚痴です。
売って後悔している人は多いと感じます。
ただ、終活の一貫で身辺整理をしている人もいるでしょう。今どき娘様も「着物はいらない」と言われるのは目に見えていますから。
そこで…
着物、と考えずに、シルクの高級生地として考えてみてください。
娘様も家庭生活する上で「何かの為に生地が必要」な時は必ずあるはずですよね。(それが何かはわかりませんが)
また話がそれてきましたか? すみません(>_<)
とにかく今、
あなたのお手元にある着物はたぶんご両親に買ってもらった、あるいはご両親か祖父母の形見の着物だと思います。
●その着物を今一度、敬(うやま)い、偲(しの)んでほしいです。
その結果として、
まだタンスに大切に仕舞っておく
何かに生かせないか考えてみる
……などなど
いろんな想いになられると思います。
大切なのは、その着物がある事を忘れないことだと思います。
タンスに仕舞ったまま忘れるのが一番いけないと思うのです。