その着物生地はアイロン(高温スチーム)をかけられる?
2017/11/17
これは、着物リメイクの作業に取りかかって最初に突き当たる問題ですよね。
ここで生地を傷める等のミスをするとリメイク不可能となります。
でも、失敗が怖くて「軽くアイロン」ではシワや折り山が取れません。
当店では、お客様の着物生地をアイロンがけしますので失敗は許されませんし、失敗した事は無いです。
その秘訣をシェアしておきますね!
まずアイロンの種類ですが、「家庭用アイロンで5000円以上のスチーム機能のあるアイロン」であれば何の問題もありません。
ポイントは、「スチーム量」と「重さ」です。
写真はティファールのアイロン(8000円程度)ですが、スチームの量が多く、重くてシワもよく伸びます。
もちろん業務用アイロンのほうが良いのですが、個人でお持ちの方はまずいないと思います。
家庭用と業務用との違いは「耐久性」と「重量」と「スチーム量」です。
家庭用アイロンは、「一日20分程度の使用で○○年間使う」という設定で生産されていますので、頻繁に使用すると一生はもたないです。
業務用アイロンは、「一日中使用しても一生使える」という頑丈な造りで、スチームも大量に噴出し、重いのでシワが伸びやすいです。
なので、一日に着物を1~2枚アイロンをかけるのであれば家庭用で何の問題もありません。
ただし、あまり安価なもの(5000円以下)は良くないです。
折りシワをとるには多いスチーム量と、アイロン自体の重さが必要です。
安価なアイロンはスチーム量が少なく、本体も軽いのでシワが取れにくいです。
折り山、シワをとる
着物を解いた後、折り山を取る為にはスチームアイロンをかけないといけません。
よく、「正絹には当て布をして低温~中温で当てましょう」という注意書きを本などで目にすると思いますが、あれは「建前論」、リスク回避のための文章です。
低温~中温では折り山や強いシワは取れないし、当て布などしては絶対に折り山は取れないです。
実際には「当て布なしで高温スチーム+霧吹き」ぐらいしないと折り山は取れません。
それでも取れない時、当店では柔軟剤を入れた水につけ、半乾きの状態で高温スチームアイロンをします。
これで、ほとんどの折り山は取れます。
ただ、霧吹きをしてアイロンがけすると水じみ(ムラ)がでる場合があります。
その場合、いったん全体を水につけて半乾きでスチームアイロンがけするとムラが出にくくなります。
微妙に色が変わる場合がありますが、さほど気にならないでしょう。(たぶん色が鮮やかになる場合が多いです。布目の中のほこりが取れるからです。)
以下に注意しないといけない生地について書きます。
これらの生地を「洋服」にリメイクする場合は問題点が多々あるため、当店では一件一件慎重に検証しています。
一口に文章で注意点を表現するのはむずかしいですが、大きな共通点として書きます。
●絞りの場合
絞りはアイロンをかけると絞りが潰れてしまい風合いがなくなります。
当店の場合は絞りの生地にアイロンはかけません。霧吹き、あるいは水につけて自然乾燥で折り山をとります。
それでも取れなければ、半乾きの生地にスチームアイロンを少し浮かした状態でかけます。(アイロンの重さで、かなりきつい作業です。)
●縮緬の場合
縮緬の場合は、「生地の縮み」に注意しないといけません。
霧吹きした瞬間に縮むものもあります。
出来るだけスチームアイロンのみにとどめましょう。
ただ、アイロンを当てるという事は”プレスする”という事ですので、縮緬の風合いを保てるかは生地によりわかりません。
●化繊の場合
化繊の場合は、高温スチームアイロンで生地が硬くなりがちです。(プラスチックが溶けて固まるイメージ)
その場合に当店では、柔軟剤入りの霧吹きをしています。
しかしあくまで化繊なので必要以上に当てないことです。
以上、3種類の生地は、特に注意すべき生地です。
※ 注意してほしいのは、「箔押し」されている部分です。
ここには絶対にアイロンを当てないでください。染料が溶けます。
あと、着物の裏地の折り山やシワは、高温スチームアイロンで問題なく伸ばせると思います。
●帯に関して
帯は絶対に水につけないでください。(霧吹きもシミになる場合が多いため、生地の様子を確認しながらの作業になります。)
帯は、水に弱く、色抜けしたり、シミになる場合がほとんどです。
帯のアイロンがけももちろん裏から当てますが、着物と違い、たぶんどの帯も折り山は完全には取れません。
「折りしろ」は、縫い代としましょう。
その際、折り山の少し内側を仕上げ線としてください。
折り山の先端は生地が擦れて弱くなっているためです。
アイロンで変色する生地がある
あくまで経験上での割合としてですが、着物100枚につき5・6枚程度はスチームアイロンで変色するものがあります。
特に、赤・ピンク・茶・オレンジ・エンジ系の色(いわゆる暖色系)には気を付けてください。
生地の端っこでアイロンテストして変色すればリメイクをあきらめるか、逆に、スチームアイロンで全体を変色させてしまい(それはそれで良いと思えれば)そのままリメイクするか、どちらかの選択になります。
尚、変色する場合は高温が原因ではありません。
たとえ、低温や中温でかけたとしても結果は同じで変色します。
赤やピンクがオレンジ色に変わる等、びっくりするような生地もありますので注意が必要です。
また、アイロン当て直後に少々変色した後、しばらく(1時間程度)して色が元に戻るものもありますので、しばらく様子を観察してみてください。
※この記事の大前提として、いかなるアイロンがけも「スチーム無し」でのご使用は絶対にお避けください。
本来、変色しない生地でも、「スチーム無し」では変色(生地焼け)します。
※また、接着芯を貼る、または貼った状態でのアイロンがけに関しての内容ではありません。あくまでも、着物を解いた後の折り山やシワを伸ばす時の内容です。
このように着物リメイクでは、生地の検証、また慎重な作業が必要となります。
ぜひ、一工程、一工程、慎重に検証しながらリメイクしましょう。
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PS.
何事も「絶対」はありません
あくまでも
過去、何千枚もの着物生地にアイロンがけをした結果としての内容です
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