振袖とその帯を余さずリメイクする、というお客様の深層心理
2018/01/04
振袖と言えば…
一生に一度きり成人式に着たきりであとは何十年も箪笥の中、
という人がほとんどではないでしょうか。
袖を短く仕立て直して着る、という人もほとんどいません。
晴れ姿として成人式に着たあとは大切に箪笥の中にしまっておく、
というのも今の日本の一つの文化かも知れませんね。
合理性を考える人は、リメイクする事に考えが及ぶのでしょうか。
今回は振袖とその帯を使って、出来るだけ生地を余さないように依頼された例です。
まずメインとしてワンピース。
それに付随して日傘(収納袋付き)とトートバッグ。
バッグの中に入れるポーチ3点。
あとはインテリア品として、クッション・テディベア2体・フラワー(薔薇12本)となりました。
「生地を余す事なくリメイクしたい」
というご要望は実はけっこうあります。
「大切な想い出の詰まった着物」なので
切られた余りの生地を見たくない
余す事なく使い切ってもらいたい
という気持ちがこちらにも伝わってきます。
これだけの品数にリメイクすると金額は15、16万円程度かかります。
たぶんですが、
振袖はご両親に買ってもらったものだと思います。
最低でも40、50万円はかかっていることでしょう。
それを成人式に一度着たきりで長年箪笥に仕舞いっぱなし、
という現実を変えたかったのだと思います。
しかもご両親に買ってもらった振袖の生地を、少しもムダにしたくなかったのだと感じます。
着物のままでは箪笥に仕舞っておく事しか出来ない。
それでは高いお金を出して買ってくれた両親に申し訳ない。
ならば着物にハサミを入れてでも有効に活用しよう。
これこそが着物をリメイクする人の深層心理なのです。
予算が許す限り、生地をムダにする事なくリメイクしたいのです。
こう考えると、着物リメイクとは「心からの行為」であることが良くわかります。
日本人の、「着物に対する特別な想い」がお客様を通して伝わってくるようで、私自身も嬉しく、また豊かな気持ちになれます。
特に振袖は、人生の大事な節目の儀式で着る着物だし、それをご両親から授かったとなれば、その人にとっては宝物でしょう。
その宝物が、一度着たきりで一生箪笥の中とあれば、誰しも心が痛むと思います。
その解決法の一つがリメイクする事なのだと思います。
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